映画『MERU』を観て、『メイドインアビス』の見方が少し変わった話。

僕の好きなマンガ『メイドインアビス』。

月刊ウェブコミックガンマで連載されていて、2018年にアニメ化。

2019年に劇場版新作も公開されます。

https://life-is.club/think-about-made-in-abyss/

主人公で探窟家見習いのリコと、アビスから現れたロボットのレグが、ある手紙をきっかけに、“アビス”の底を目指す物語です。

メイドインアビス』のリコは自分勝手でウザいキャラ?

僕は、リコがアビスに挑戦する理由が「困難であっても達成したい目標があるから」だと解釈していました。

不相応だとわかっていても、アビスに潜る理由(=ライザからの手紙)があるからどうにかしてたどり着きたい。 そのためには、どんな犠牲も厭わない。

そんなキャラだと思っていました。

 

物語が進むにつれリコの印象が変わるとはいえ、人によってはそんなリコが自分勝手でウザく見えてしまうのだろうと思います。いきなり出てきた手紙って、命を懸ける理由としてはあまりに弱いですからね。

大抵の人はナットに共感するだろうし、それを裏切るリコを敵視すると思います。

 

でも、『MERU』という映画を観てその解釈が変わりました。

改めてじっくり読むと、リコは元々一つの目的のために行動しています。

登山家のドキュメンタリー『MERU

MERU』は、2015年に公開された映画です。

ヒマラヤ山脈の一つ。 インドにあるメルー峰登頂を目指した3人の登山家と関係者達が、それぞれの心境や当時の状況を語ります。

https://www.youtube.com/watch?v=i5w5bFXB2TQ&feature=youtu.be

この映画で語られているのは、「山に登らない人生は想像できない」「人生を賭けた目的のために登っている」「無謀で死ぬことは恥」ということ。

登山家だって家族があるし、死にたくはない。死ぬわけにはいきません。

 

でも、中には危険を冒さなければ登ることのできない山もあります。

そんなときに、強い葛藤が起こります。

本人以外には価値がなく、正当化することが出来ないからです。

 

登山家の人たちは、もちろん達成感を得るために登るのだろうけれど、多分それはある程度慣れたころから。初めのきっかけとなるのは、「やり残したくない」という強い思いなんじゃないかと思うんです。

危険の中で考えて、生き残ろうとしなければ安心できないからそうしているだけなんじゃないか、ということです。

 

映画の中でこんなエピソードがあります。

登山家になってすぐ母にこう言われた。 “登山家になるなら1つ約束しなさい” “決して私より先に死なないと” 山で決断が必要になると、いつもそれを思い出した。 “これをしたら約束を破る危険性はあるか?”と 母が死んだときに、もっと先が見えたんだ。 今でも覚えてる“行くぞ”と思った。

これは”登りたいから登るというより”、”枷が外れたからそれに従う”ということ。

 

初めにやりたいのは不安を解消すること。

登頂して得られる達成感はおまけみたいなもので、不安を乗り越えた先に得られる楽しみなんだろうと思います。

そうじゃないと、手足が腐り始めるまで登り続けることなんてできません。それより、地上でじっとしている方が怖い。なぜなら、山に登らないと“やり残した気持ちになるから。”

 

https://life-is.club/meru/

リコも“やり残す”のが怖いのだと思う

リコにはアビスについての知識を持っているから、基本的には理性的に行動します。人と交渉することも出来るし、初めて見た生き物の習性を予測することもあります。

でも、とっさの時に行動するのは、いつも後悔しないためです。

 

リコがお腹を壊してでも拾い食いをするのは、後悔しないため。

いい 外国の人が持ってきた食べ物はね 食べちゃいけないって教わっているの だから食べないと損なの‼じゃなきゃ一生食べられないかもしれないでしょ

 

でも、初めはそれを自覚していません。だから、適当な理由を付けて自分を納得させようとします。

その最たる例が手紙のちょろまかし。

もちろん子供らしい寂しさを感じたというのもあるかもしれないけれど、「お母さんが私に送った手紙」という根拠のない理由は、理由じゃなくてただの思い込みです。

でも、本人は納得しています。

 

そこから抜け出すのは、レグがオーゼンに壊されそうになった時に出た本音。

わたし…長生きしたくてアビスに潜ったんじゃない…!

その後、「オーゼンのお墨付き」を得ると少しづつ考えが変わってきます。

 

4層で自分の腕を切り落とすよう指示したのも、

前線基地で5層の上昇負荷を受け入れようとしたのは、後悔しないため。

怖い…怖いけど… 手遅れになったもの見せられて後悔するのは…もっと怖い…

 

そうやって危機を回避する中で、アビスの深層でしか知りえない知識を身につけるうちに、徐々にリコの目的がはっきりとしていきます。

(まあ、リコの出生を踏まえるとどうなのかはわかりませんが。)

白笛は大体そんな人。みんな理由は後付け。

今のところ登場している白笛は3人。ライザ、オーゼン、ボンドルド。

ライザは自分で枷(リコ)を外して、オーゼンは私情ありきで徹底的な教育を、ボンドルドは自分を犠牲にしています

 

みんな、躊躇しない人ばかりです。

 

 

…というのが、思い至った内容。

連載中だから先の展開はわからないけれど、続きがとても楽しみです。